だからキスして。
「ラボ…ルト…?
アリ…アス…
ブルータス
…マルス」

石膏像には名前がある事に今、気づいた。
こんなにマジマジと見た事ないもんね。

ってか外国人…

「彫りが深ーい!トム・クルーズもこんなんかな~」

そして、ふと…恥ずかしい事を考えた。

「キスする時って、鼻が邪魔になんないのかな?」

彼氏もいなければ、当然キスした事もない。

映画とか、ドラマとか、マンガでは見た事あるから
何となくは知ってる。

だから私の頭の中では憧れの初キスのシナリオが何となく出来上がっていた。

「前から君の事が好きだったんです」

って、かっこいい男の子に告られるのよね。

今の頭ン中の相手は阿部くん。

もちろん私も彼の事は好きだったわけで。

「私も…ずっと好きだった…」

当然、そう答える。

「まり奈…」

彼は私を抱き寄せて、唇を近づけてくる。

私は自然と目を閉じて────




えっと…こう顔をちょっと傾けて…

唇めがけて────



「阿部くん…」







「ブハッ!!ハハハ!!」



石膏像相手にキスの練習をしようとした時、物陰から笑い声が聞こえてきて

私の心臓はマジで止まるかと思った。
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