だからキスして。
阿部くんの意地悪な声と言葉。

例え好きだとしても
『yes』とは言えない。一応、私は教員なんだから!

「ち…」

「ち?」

「違う…よ…」

「へぇ~?じゃあ、中川センセは覗きが趣味で、彼氏もなく独り寂しく石膏像なんかにキスするような人だって誰かに言っちゃおーかなー」

「キャ────!違わない!好きよっ!大好き!」

慌てた私は、カーテンから出て大声で好きだと言ってしまった。


うわぁ~
終わった…私の人生が…私のイメージが…


もうどうしていいか分からなくなって、またカーテンに身を隠した。

阿部くんがカーテンをちょっと引っ張って言った。

「やっぱりね♪素直じゃないんだからさ」

「…誰かに言う?」

「言われたらマズイ?」

「当たり前じゃない!」

「じゃあ取引しようか?」

「と、取引?」

そう言われて緊張した。
お金とか要求されるのか…?

───はっ!!

もしかして身体を要求されるとか!?

最近の高校生って怖いのかも───






「付き合ってくれたら誰にも言わないよ」





「…どこへ?」


「!?…アハハハハ!!ちょっ…やめてくれよ~どこまで天然なんだよ~」
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