だからキスして。
まさに時間が凍りついたと思った。

誰にも知られたくなかった秘密。もちろん家族にだって。

俺の頭は、とてつもなく無防備になってる。

絶対に見られた…

そう思いながらも、慌ててカツラを拾い頭に乗せ、更に帽子もかぶった。

と、同時に母親は立ち上がって、クルッと後ろを向いた。

「さ、さーてと!あっ、そうそう!晩御飯作らなきゃね!」

「お、俺、彼女と約束あるから!行ってくるわ!」

見ないフリをしてくれたのが逆に悲しかったのかもしれない。

だけどそんな事を感じる余裕もないまま俺は家を飛び出して車を走らせた。




あぁぁぁぁ………

見られた…………

なんか…

なんかさ、



一人えっちしてる所を見られるより恥ずかしいんだけど!

つーか、見られた事ないから分かんねーけど!

とにかくショック。
メチャメチャ焦りながら俺は彼女の家に向かった。

心臓がバクバクいってるのも治まらないうちに、舞菜の家のチャイムを押す。

「はーい。あっ、滉一。早かったね」

「うん…急いできたから」

「別に急がなくても良かったのに。ねぇ入って?ご飯作ったから食べるでしょ?」

そう言って舞菜は可愛い笑顔を見せた。
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