だからキスして。
塾に行かなくなってから一ヶ月が過ぎた頃

母親から怒られた。

「アンタさ、塾に行ってないんだって?電話があったわよ」

「別に…必要ないでしょ?」

「タダじゃないのよ。それに、大学行くのなら行きなさいよ」

「大学なんて…」

───もう、どうでもいい。

あたしは自分の人生が終わってるような気がしていた。

「何よ」

「…なんでもない。学校行ってくる」

「今日は塾に行きなさいよ」

「…ん」

あたしは席を立ち、鞄を持って母親とは目を合わさずに家を出た。

心の中では母親に反抗しているのに、現実的にケンカする気力はなかった。

きっと、何を言ってもあたしの事なんてわかってもらえないんだ。

どうせ塾だって、見栄で行かせてるだけだし。あたしの為なんかじゃないんだから。

頭から塾に行く気のないあたしは、学校が終わると何にもする気にならなくて

珍しく真っ直ぐに家に帰った。




──ただいま。



…なぁんて言わない。どうせ誰もいないんだし。

そのまま二階の自室に行こうとして、居間から声がするのに気づいた。

「…っ…ん…ぅん…あっ…」

「あれ…?娘が帰ってくるんじゃないの?ヤバくない?」
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