だからキスして。
「…っ…平気…よ…あの子…塾だもの…あん…もっと…」

「悪い母親だな…」





ママと───ママの男

二人は居間でsexを楽しんでいた。あたし達の…家族の家の居間で。

ソファが軋む音が響く。

…こんなトコでヤんないでよ。

バカじゃないの。







──死ねばいいのに






死ねばいいのに───



あたしはそっと洗面所へ行き、戸棚にあるバスタオルに火をつけて家を出た。

あんな人、死ねばいい。

男と一緒に死ねばいい。全てを裏切って、抱き合ったまま、繋がったまま不様な姿で地獄に行けばいい────

あんな家、いらない。全部燃えちゃえばいいんだ。

全部なくなってしまえばいいんだ。

もう何にもいらない…


最初はゆっくり歩いていたあたしの足は、気づくと走り出していた。

後ろから恐怖が追いかけてくる。

今頃、火が燃え広がって家を真綿のように包んでいる。

煙にまかれて、ママと男は死んだかもしれない。



…ドキン…



心臓が止まったママと男が怒って、あたしを追いかけてくる気がして──怖かった。

後ろは見れなかった。



───誰か助けて…




< 94 / 110 >

この作品をシェア

pagetop