だからキスして。
怖くて人通りの多い駅前に行ったけど、恐怖は消えなかった。

人混みに紛れる事で、今度は余計に罪の意識が強くなっていった。



…どうしよう
どうしよう

   どうしよう…



「…おいっ…!」

「きゃあっ!!」

やみくもに歩き回るあたしの腕が急に掴まれ、心臓が止まるほど驚いた。

「立花…!?立花だろ!!」

一瞬、誰かわからなかった。
相当パニックになっていたみたいだ。

「立花!?おい、しっかりしろって!」

「────岸…岸田先生…?」




それが塾の…ウザイ先生だとわかって、何故かホッとした。

急に目の前が真っ白になって、あたしは岸田先生にもたれかかった。

「立花?!具合悪いのか!?立花、立花…」





名前を何度も呼んでくれたのは覚えている。

その後、少し記憶が途切れて───
次に気づいた時は、どこかの事務所みたいな部屋のソファに横になっていた。

「立花?大丈夫か?」

「岸田先生…」

目を開けると、先生の顔が目に入った。

今度はちゃんと誰だかわかった。

「…何かあるならオレに話せって言ったじゃん。少しは楽になれるって──」

「先生…あたし…人を殺したかもしれない」
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