だからキスして。

…自分一人では抱えきれなくなった。

怒られるのも
ひかれるのも覚悟して、あたしは先生に呟いた。

「どうしよう…あたし…どうしよう…」

「ゆっくりでいいからきちんと話せ。何時間かかってもいいから」

先生はあたしの目を見て、真剣に優しく言ってくれた。

急に涙が溢れ出す。

「家に…家に火をつけて出てきちゃったんです…家にはママと…ママの恋人がいて…」

今まで誰にも言えなかったこと。

友達にも言えなかったことを、あたしは初めて口に出して

気持ちを吐き出した。

それは途中で止まらずに、あとからあとから言葉が出てくる。

ああ…そうか

あたし誰かに言いたかったんだ

誰かに知ってほしかったんだ

先生は黙って全部聞いてくれた。

あたしを否定する事なく、負の感情も全部受け止めてくれた。

涙で言葉を詰まらせても、次の言葉を待っていてくれた。

自分がどうすべきかも、先生は示してくれた。

「とりあえず家に戻ってみよう」

「でも…でも…」

まだ燃えてるかもしれない。
ママが燃えてるかもしれない。

「オレも一緒に行くから大丈夫だよ」

そう言って、頭をなでてくれた手に
あたしは安心して頷いた…。
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