朽ちる少女

「あのさ」

 僕は意を決して、神原さんの正面に立った。

「どうしたの?」

「言わなきゃいけない事があるんだ」


 ここから先に進むには勇気が必要だ。
 それは、自分の想いを伝えるという事だけではなく、神原さんとの別れなければならないからだ。

 それでも僕は、踏み出さなければならない。


「中学生の時、この橋は僕の通学路だったんだ。毎日毎日、ずっとこの橋を渡ってた。だから、3年前もこの橋を渡ってた。だから、毎日毎日、この橋を渡り、毎日毎日、神原さんを見ていたんだ」

 3年前から知っていた事を告げると、神原さんは少し驚いたように見えた。でも、優しく微笑みながら、話しの続きを待ってくれる。

「3年前の3月、僕は親の都合で引っ越してしまって。
 でも、ずっと、何も変わっていなかった・・・・・」


 多分、気付いた。
 僕と同じように、気付いた。

 だから、そこで言葉に詰まった僕のために、「頑張って」と応援してくれたんだ。


< 26 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop