朽ちる少女
後頭部だ。
俺の位置から見えているのは、後頭部だ。
ポリエチレン素材の様な茶髪。
微動だにしない。
当然、声も出さない。
マネキン…
マネキンだ。
そうに違いない。
いや、しかし…
この腐臭は何だ?
血の気が引いた脳味噌は酸素不足で、結論を導き出す事が出来ない。
殺人事件とか、3億円強奪事件とか、大事件が起きてそれに自分が巻き込まれる。退屈な日常に劇的な変化が起き、俺は世界中を逃げ回り、行く行くは伝説に…
有り得ない。
そんなものは妄想だ。
「ハハ…ハハハ」
その時、マネキンである筈の頭が、右側に少し傾いた。
「笑わないでよ」