朽ちる少女

「忘れないよ。
 絶対に忘れない!!」

「ムリ。嬉しいけど絶対にムリ。ムリなんだよ・・・」

「大丈夫!!」
 そう言うと同時に、足元に転がっている瓦の破片で左手を削る。

「な、何してるの!?」

「こうすれば・・・これなら、左手の傷が痛めば、絶対に思い出す。例え忘れても、絶対に思い出すよ!!」

 全身を小刻みに震わせ、必死に痛みに耐える俺を見て、彼女は泣き笑いする。

「馬鹿だなあ、アッちゃんは。
 アッちゃんが私を忘れても、私はずっとアッちゃんと一緒にいるから。大丈夫、暗闇はいつもアッちゃんの味方だからね」


 少女の影が消える。
 声が途絶える。
 気配が消える。

 そして、記憶が途絶えた―――――


< 58 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop