朽ちる少女
「忘れないよ。
絶対に忘れない!!」
「ムリ。嬉しいけど絶対にムリ。ムリなんだよ・・・」
「大丈夫!!」
そう言うと同時に、足元に転がっている瓦の破片で左手を削る。
「な、何してるの!?」
「こうすれば・・・これなら、左手の傷が痛めば、絶対に思い出す。例え忘れても、絶対に思い出すよ!!」
全身を小刻みに震わせ、必死に痛みに耐える俺を見て、彼女は泣き笑いする。
「馬鹿だなあ、アッちゃんは。
アッちゃんが私を忘れても、私はずっとアッちゃんと一緒にいるから。大丈夫、暗闇はいつもアッちゃんの味方だからね」
少女の影が消える。
声が途絶える。
気配が消える。
そして、記憶が途絶えた―――――