朽ちる少女
翌日―――――
いつも通り残業で遅くなった僕は、いつも通り駅前のコンビニに立ち寄り、いつも通り弁当を買い、いつも通り家路に着いた。
疲れた身体を僅かに残った気合いで動かし、歩道橋の階段を上がる。多忙で平凡な一日に埋没し、すっかり忘れていた事を思い出した。
「真夜中の妖精?」
そう呟いて、馬鹿な事を口走ってしまった、と苦笑いする。
「こんばんは」
不意に聞こえた声に、驚いて顔を上げる。すると、まるで僕を待っていたかの様に、昨夜の少女が歩道橋の真ん中に立っていた。
「こ、こんばんは」
少しだけ上擦った声がこぼれ、思わず焦ってしまう。
歩道橋の下を通過するトラックのライトが、残業終わりの目には厳しくて、目がチカチカと揺らめく。その光に照らし出され、短いスカートを翻して少女が笑顔を見せる。
彼女は軽くステップを踏みながら、ゆっくりと僕に近付いてきた。