朽ちる少女
翌日は昼過ぎから天気は下り坂で、街灯がアスファルトを照らす頃には土砂降りになった。
何気なく、薄暗くなった外に目をやる。
デスクに山積みになっている書類の向こう側、ガラス越しに見える空。その真っ黒な空の下で、傘を差してクルクルと回る女子高生の姿が見えた気がした。
「バカか・・・」
自分の考えている事に、思わず失笑する。
しかし、雨で5分遅れの終電で帰ってきた僕は、幻想的な光景を目の当たりにする。
退社した頃から弱くなった雨は霧雨になり、周囲の光を吸収して歩道橋の上を銀色の世界に変えていた。その輝く空気の中で、透明な傘を高く掲げた少女が、楽しそうにステップを踏んでいたのだ。
「妖精のワルツ」
決して大袈裟な表現ではない。
今ここに、10人いれば10人が納得するに違いない。
言葉も無く見詰めている僕に気付き、少女が駆け寄って来た。
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