朽ちる少女

「こんばんは」

 日常になりつつある出会いと、交わされる挨拶。

「こんばんは」

 少女はビニール傘をクルクルと回し、ポンと空に放り投げた。


「ねえ、なぜ私は悲しんでると思う?」


 意外な質問だった。

 悲しんでる?
 そうは見えない。
 オーバーアクション。
 快活な口調。
 明るい笑顔。
 真夜中にフラフラと・・・・・
 ああ、真夜中にフラフラ、か。

 なるほど。

 悲しんでる理由。
 悲しんでる理由。
 女子高生が悲しくて真夜中にフラフラする理由を、僕は1つしか思い付かない。


「失恋」


 僕の回答に、少女は風に吹かれてクルクルと回る傘を受け止め、満面の笑みで応える。

「スゴイ、大正解!!
 失恋バンザーイ!!
 お前の事は忘れるから、俺の事も忘れろよ!!だって。
 バッカじゃーん!!」

 少女は傘を右手に持ち、高々と天に掲げ、笑い声を響かせながら去って行った。


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