朽ちる少女
舗装されていない脇道に入り、少し傾斜がある道を立ちこぎで登りきる。右側に立つ納屋の軒下に自転車を停め、再び汗を拭った。
まったく、梅雨もへったくれもない。地球温暖化か何か知らないが、少しは雨が降らないと、通学が暑くてかなわない。
母屋に入ろうとした時、いつもと違う光景に一瞬立ち止まる。
「ああ」と一人で納得する。
違和感の原因は直ぐに分かった。いつも納屋の軒下に座っている、祖父の姿がないのだ。
まさか倒れている訳ではなかろうかと、周囲を見渡す。
すると、祖父は納屋の一階にある作業場に、姿勢を正して座っていた。
懐かしい光景だ。
僕が幼い頃には、今の様に背中を伸ばして座り、木と睨みつけていた。
「木に像が見える」らしい。
今となっては、本当かどうか怪しいところだ。