朽ちる少女

 祖父は完成した像を持ち、僕に差し出す。

「自分達を守護し、育み、慈しむ存在を忘れる。
 自らが世の中心であるかの様に、横暴に振る舞い、他の生命を脅かす。
 かつては持っていた自浄能力を、人間は本当に失ってしまったのだろうか?
 ワシ等には、もう答える事が出来ない」


 僕は土砂降りの中、再び外に飛び出した。今度は、雨宝童子の像を胸に抱いて。


 今まで考えた事もなかったが、世の中には目には見えない規律があり、それを守る事によってバランスがとれ、自浄能力が発揮されるのではないだろうか。

 それなのに、個性だの自己責任だの、全体のバランスを無視して個を主張している。

 それ全てが悪いとは言わない。でも、自分勝手に振る舞う事は多分、自己主張や自己の確立ではなく、横暴なだけなのだ。勘違いして、世の中を歪めているだけだ。


 そうだ―――――
 敬い、感謝し、畏れ、頭を垂れる。

 そんな当たり前の事が、雨宝童子と共に忘れ去られている。

 雨は降らない。
 罪は償えず、生命は育まれず、全てが曇っていく。

 

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