朽ちる少女

ん……
気を失っていたのか?
薄汚れた天井が見える。
どうやら、誰かに運ばれて寝かされたらしい。

ベッドの上ではない。
畳…あれ?
裸電球…
天井は板?

徐々に明確になる意識。強い違和感を覚えた俺は、勢い良く起き上がった。


漠然とした違和感は、起き上がった瞬間に確信へと変わる。

見た事が無い部屋。
鉄筋コンクリートの老人ホームではなく、木造住宅。しかも、まるで戦時中のそれだ。

「大丈夫ですか?」

不意に若い女性の声が聞こえ、驚いた俺は大きな動作で振り返った。


「もう大丈夫ですか?」

繰り返す少女は、薄汚れた白いシャツに、これまた薄汚れた黒いもんぺを履いている。


明らかに何かが変だ。
少女の背後にある玄関から、外の様子が見える。

舗装されていない道。
博物館級の自転車が、ごく当たり前に通り過ぎる。

まさか…
漫画でもあるまいし。
まさか――

 

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