* 王子と契約彼女 *
ガラッ
「あれ‥まだいない‥」
さすがに優くんが図書室へ戻っているだろうと思って早足で来たのに、図書室に人の気配はない。
「ふぅ‥」
私はさっき座っていた席に座った。
ピタッ
「ひゃっ?!」
すると、何か冷たい物が頬に当たった。
「優くん?!」
振り向くと、そこには冷えたジュースの缶を持った優くんがいた。
「どこ行ってたんだよ(笑)」
「職員室の場所わからないらしくて、案内してたの」
「ふぅーん。あ、ジュース買ったからさ、飲も?」
「やったあ♪ありがとう♪」
「ここじゃさすがに怒られるよな‥来てっ」
「えっ?」
優くんは荷物を片付けると、私の腕を掴みどこかへ連れ出した。
‥‥‥‥‥‥
「ここ☆」
「ここは‥屋上?」
連れてこられたのは、屋上。
でも、本当は来ちゃダメなはず‥。
「来ていいの、、?」
「ひみつ、な☆‥ほら」
優くんはまたあの天使の笑顔をし、遠くを指差す。
私は優くんが指差すほうを見た。
「‥‥綺麗‥‥‥!」
そこには、沈みかけの夕日が空を朱く染めていて、不思議な光景があった。
「だろ?さ、飲もっ」
「うん☆」
優くんと二人きり、屋上で素敵な景色を見ながらジュースを飲む。
私はこの時間がすごく幸せで、夕焼け空を見ながら自然と笑顔がこぼれていた。
優くんはそんな私を見つめた後、夕焼け空を見ながら言った。
「ここ、ななにしか教えてないから。誰にも言うなよ?」
「うん♪‥‥‥‥え?」
今、なんて言った?
私だけに‥って言った?
それって、どういう意味?
私は優くんを見つめ返す。
優くんはそんな私を気にもせず、夕焼け空を見ながらジュースを飲んでいた。