* 王子と契約彼女 *
「帰るか」
「うん‥」
帰ろうと言った優くんは、どこか機嫌の悪そうな声をしてた。
グイッ
優くんは私の手を握り、何も言わずにそのまま歩きだす。
私はそんな優くんに手をひかれながら、後ろを歩いた。
「なな‥」
「‥なに?」
優くんと手を繋ぐのははじめて。
ドキドキと音を立てる胸の音を聞かれていないか、そんなことばかり気にする私。
優くんは私に背中を向けたまま、続けて言った。
「簡単に手繋がれたり、キスとかされんなよ」
「ごめん‥‥‥」
そう言って私は謝るけど、優くんは何も言わずにそのまま歩き続ける。
「「‥‥‥‥‥」」
黙りつづける私達。
先に口を開いたのは、優くんだった。
「だあっもう///ななは隙がありすぎなの!」
「う‥ごめんなさい(泣)」
優くんは怒っているというより、少し恥ずかしそうに言った。
私と優くんはまだ手を繋いだまま。
「(もしかして、嫉妬?)」
"嫉妬なの?"そう優くんに聞きたかったけど、今こうやって手を繋いでいることが幸せで‥、私は何も言わずに少しだけ、手を強く握り返した。
こんな私達の姿は、周りからみたら本当のラブラブカップルに見えただろう。
「あ、!」
いきなり優くんが声を出す。
「なに?」
「俺、明日からしばらく夕方一緒に帰れねえや‥」
「ふぅん‥て!、なんで?!」
せっかくのいいムードが、台なしだよ。
「ほら、バスケの試合近いんだよ‥だからしばらく部活ハードで‥タイミングわりぃなぁ‥」
「そんなぁ‥(泣)」
このときは気づかなかったけど、優くん寂しそうにして、私と帰りたかったのかな?
なんてこのときは気付かずに私もただ一緒に悲しんだ。
「ごめん!そのかわり、再来週のテスト期間は帰れるから!」
「はぁい‥」
「あいつには気をつけろよ!」
「うん。しばらく友達と帰る‥」
「なら安心だな。」
そう言ったところで別れ道に辿り着き、優くんとバイバイした。