* 王子と契約彼女 *
「へ?」
「俺もななちゃんと付き合いてぇ」
「は、はは‥」
薫くんはいつでも素直で率直だ。
「(す、隙見せないように‥)」
作業を進めながらも、内心薫くんに隙を与えないようにするのに精一杯の私。
「ななちゃんと優先輩ってさぁ‥」
そして、続けて薫くんは言う。
「‥‥‥本当に付き合ってんの?」
「え‥‥‥‥‥‥!?」
薫くんの言葉で心臓が止まりそうになった。
だって、本当は付き合ってないから‥
「な、なんで‥?」
「だってさぁ、二人が一緒なのって学校じゃ登下校くらいだし、休みは優先輩部活だろ?ほとんど一緒にいねぇじゃん」
「そ、そうなんだよね!優くん部活忙しくって!!寂しいんだよねぇ‥ホント(汗)」
私は必死で言い訳した。
けど、薫くんは疑いの目を向けたまま私をジッと見つめる。
「な、なに‥?」
「ななちゃん、嘘下手。」
「う、嘘じゃないヨ?」
声が裏返る私。
確かに、私は嘘が下手だ。
「別にばらしたりしねぇよ」
「ホント?!‥‥‥‥‥あ(汗)」
ついつい自分からばらしてしまったような状況に、私は更に焦る。
「‥ぷっ‥ななちゃん、かわいい(笑)」
「へ?!///」
そして薫くんは私に顔を近づけ、耳元で囁いた。
「"付き合ってないなら、俺、ななちゃん本気で奪うから"」
「////////」
私は目を見開いたまま固まった。
薫くんはニッコリ笑いながら、集計作業に戻った。
「あ!」
「?!」
薫くんは作業を一旦止め、何かを思い出したかのように私に話しかける。
「今日一緒に帰れるね♪」
「(ぇぇえええ(汗)!)」
そうだ。
今日は真由美もちかももういないから、断る理由が見つからない。
優くんに言われたばっかりなのに、今日薫くんと帰ることになってしまった‥。
「(気をつけてれば大丈夫‥だよね?)」
不安を抱えながら、続きの集計作業を進めた。