* 王子と契約彼女 *




「先輩がそんなに怒る必要ないですよね」



私が優くんにこっぴどく叱られていると、薫くんが割り込んできた。



「お前が彼女に手出そうとするからだろ?!」



優くんはめちゃめちゃキレてる。



「彼女って‥本当の彼女じゃないくせに」

「え‥‥‥‥‥」



薫くんの言葉に、優くんは一瞬固まって、すぐ私の方を向いた。



「なな‥言ったのか?」

「え、ちがっ‥」

「俺が自分で分かっちゃっただけですよ」



優くんはまた薫くんを見た。



「‥‥‥‥‥なんなんだよ‥」



優くんは頭をくしゃくしゃと掻き分け、混乱してるみたい。



「ば、ばれちゃったの‥」

「安心していいですよ、先輩。誰にもばらさないんで」

「‥‥‥‥‥」



優くんは黙ったまま。

そして、私は決心した。

今ここで優くんを好きって言って、薫くんには諦めてもらおう。そして薫くんがいなくなったら、潔く優くんにフラれようって。



「薫くん‥!」



混乱してる優くんを差し置いて、私は薫くんに話しかけた。



「なに?ななちゃん‥」

「私‥私ね、



優くんのことが好きなの。



だから、諦めてください」

「‥‥‥‥‥」



ちらっと優くんを見たけど、まだ混乱してるみたいで聞こえていたのかすら分からない。

そして薫くんは答えた。



「‥うん。今日は諦める」

「へ?今日???」

「押し倒してごめんな。優先輩にはななちゃんから説明しといて。じゃあね、また明日。」

「え‥‥‥‥‥」



薫くんは優くんを私に押し付け、ささっと帰ってしまった。




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