坂道
そんな裕美の気持ちを、高校に入ってから同じクラスになり仲良くなった香澄は、すぐに気がついた。


素直に感情を表に表す香澄は、まるで妹のような裕美の秘めた想いを、相手に伝えてあげたいと、ずっと思っていた。



ある日、香澄は教室の隅でクラスメイトと話していたケンジに声をかけ、教室のすぐ傍の非常階段に呼び出した。


そして、戸惑うケンジに向かって、裕美の切ない想いを伝えた。


香澄は、ケンジにその想いに応える気があるなら、七時に公園に行くように言うと、あっけに取られているケンジを一人残して、学生たちで賑わう教室へと入っていった。



裕美は、香澄からそのことを聞かされると強引だなあ、とは思ったが、嫌とは思わなかった。


逆に弱い自分が変わる、そんないい機会を作ってくれた友人に、感謝の気持ちすら覚えていた。




裕美は、高鳴る心臓を押さえ、小さく頷いた。
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