坂道
二人が、市役所の従業員用出入り口のガラス戸を押したときには、すでに午後六時を回っていた。
奈央は受付のおじさんに軽く挨拶をすると、すでに二、三歩先を歩いているあおいの背中を早足で追った。
二人は店の前に到着すると、濃い茶色の木の枠にはまったガラスの窓から中をのぞいた。
案の定、席には余裕がありそうだ。
「いらっしゃい。」
開け放たれた扉を横目に入り口をくぐると、カウンターの向こうからひげを生やして長い髪を後ろでひとつに結んだ店主が、優しそうな笑顔でそう出迎えた。
間接照明がほんのり照らす店内は、落ち着いた雰囲気である。
最近通い慣れていて、店主と顔見知りになりつつある二人は、軽く会釈をして窓際の席に着いた。
テーブルの真ん中に置かれたキャンドルの光が、いかにも店主のセンスの良さを感じさせる。
やがてやってきた店員に、あおいがスプマンテをオーダーすると、続いて奈央も赤のグラスワインと、アンティパストの盛り合わせを注文した。
「もうすぐ夏も終わりだね。」
「うん。」
窓の外を見ながら話しかけてくるあおいに、奈央は小さく頷いた。
奈央は受付のおじさんに軽く挨拶をすると、すでに二、三歩先を歩いているあおいの背中を早足で追った。
二人は店の前に到着すると、濃い茶色の木の枠にはまったガラスの窓から中をのぞいた。
案の定、席には余裕がありそうだ。
「いらっしゃい。」
開け放たれた扉を横目に入り口をくぐると、カウンターの向こうからひげを生やして長い髪を後ろでひとつに結んだ店主が、優しそうな笑顔でそう出迎えた。
間接照明がほんのり照らす店内は、落ち着いた雰囲気である。
最近通い慣れていて、店主と顔見知りになりつつある二人は、軽く会釈をして窓際の席に着いた。
テーブルの真ん中に置かれたキャンドルの光が、いかにも店主のセンスの良さを感じさせる。
やがてやってきた店員に、あおいがスプマンテをオーダーすると、続いて奈央も赤のグラスワインと、アンティパストの盛り合わせを注文した。
「もうすぐ夏も終わりだね。」
「うん。」
窓の外を見ながら話しかけてくるあおいに、奈央は小さく頷いた。