坂道
夜の帳の下りた室内でケンジは、今のその体には少し小さい勉強机に座ると、ぼんやりと宙を見つめた。
「ケンジ、電話よ。」
唐突に、一階から母親の呼ぶ声がした。
ケンジは重そうに腰を上げて立ち上がると、ゆっくりと階段を下りて居間の扉を開けた。
そして、電話の前まで足を引きずるように歩いていくと、気が進まない様子で受話器をとった。
「もしもし。」
「あ、ケンジ君…。」
電話の向こうからは、ケンジの名を呼ぶ小さな声が聞こえた。
「奈央です…。」
「え、どうした。」
引っ込み思案な奈央が、家の電話にかけてくるのは珍しい。
ケンジは一瞬意表をつかれた。
「明日、用事あるかな…。」
「ううん。別に、ないよ。」
もともと、ケンジは裕美のことだけのために、実家に帰って来たのだ。
用事などあるはずもない。
「じゃあ、ちょっとお昼にお話が出来ないかな…。明日から私、お盆休みなんだ…。」
その思いつめたような奈央の口調に、ケンジは小さく返事をすると、待ち合わせの場所を決めて電話を切った。
いったい突然どうしたのであろうか。
「ケンジ、電話よ。」
唐突に、一階から母親の呼ぶ声がした。
ケンジは重そうに腰を上げて立ち上がると、ゆっくりと階段を下りて居間の扉を開けた。
そして、電話の前まで足を引きずるように歩いていくと、気が進まない様子で受話器をとった。
「もしもし。」
「あ、ケンジ君…。」
電話の向こうからは、ケンジの名を呼ぶ小さな声が聞こえた。
「奈央です…。」
「え、どうした。」
引っ込み思案な奈央が、家の電話にかけてくるのは珍しい。
ケンジは一瞬意表をつかれた。
「明日、用事あるかな…。」
「ううん。別に、ないよ。」
もともと、ケンジは裕美のことだけのために、実家に帰って来たのだ。
用事などあるはずもない。
「じゃあ、ちょっとお昼にお話が出来ないかな…。明日から私、お盆休みなんだ…。」
その思いつめたような奈央の口調に、ケンジは小さく返事をすると、待ち合わせの場所を決めて電話を切った。
いったい突然どうしたのであろうか。