坂道
土手にて
雪が降っていた。
土門は就職が決まり、受験を受けに東京に行ってしまったケンジには内緒で、時々野球部のグランドで練習に励んでいた。
その日も、いつものようにナイロン製のランニングウェアを着て、冬のグランドにやってきた。
グランドに入ろうと土門がスタンドを下っていると、途中で一つの人影に気がついた。
その人影は、内野を見下ろせる雪の積もった芝の上に、静かに腰をかけ、雪の降り積もったグランドをただじっと見つめていた。
その少女は凍えるような寒さだというのに、マフラーや手袋もせず、茶色のダッフルコートを着て寒そうに身を縮めているだけであった。
土門は多少迷った後、その少女に声をかけた。
「裕美。こんな雪の中、何をしているんだ。」
「あ、土門君。」
裕美は、土門の姿に気がつくと、こぼれるような笑顔を浮かべた。
「見ての通り。グランドを見てるんだよ。」
裕美はそう言うと小さく笑った。
そして、土門に向かって手招きをすると、自分の隣に座るよう促した。
土門は就職が決まり、受験を受けに東京に行ってしまったケンジには内緒で、時々野球部のグランドで練習に励んでいた。
その日も、いつものようにナイロン製のランニングウェアを着て、冬のグランドにやってきた。
グランドに入ろうと土門がスタンドを下っていると、途中で一つの人影に気がついた。
その人影は、内野を見下ろせる雪の積もった芝の上に、静かに腰をかけ、雪の降り積もったグランドをただじっと見つめていた。
その少女は凍えるような寒さだというのに、マフラーや手袋もせず、茶色のダッフルコートを着て寒そうに身を縮めているだけであった。
土門は多少迷った後、その少女に声をかけた。
「裕美。こんな雪の中、何をしているんだ。」
「あ、土門君。」
裕美は、土門の姿に気がつくと、こぼれるような笑顔を浮かべた。
「見ての通り。グランドを見てるんだよ。」
裕美はそう言うと小さく笑った。
そして、土門に向かって手招きをすると、自分の隣に座るよう促した。