坂道
第十二章 こうかい
部屋にて
裕美の母はテーブルの上に突っ伏したまま、静かに眠っていた。
憔悴しきった顔にかかるその白髪交じりの髪は、部屋の窓の隙間から吹き付けてくる風にかすかに揺れている。
月明かりにうっすらと照らされた、安らかなその母の寝顔の横には、一通の手紙が置かれていた。
------------------------
あなた、ごめんなさい。
私はあの子を幸せにすることが出来ませんでした。
いろんな悲しい思いや辛い思いをさせたというのに、いろんなことを我慢させてきたのに、何の幸せも掴むことなくあの子は逝ってしまいました。
あの子を守ることが出来なかった私は、本当に親として失格ですね。
でも、これだけは言えます。
あの子はその短い生涯を、立派に生きたということを。
そんな子に育てることができたことが、私の唯一の誇りです。
一昨日、あの子の部屋の中で見つけた日記を、ケンジさんの家に届けに行ってきました。
きっと、ケンジさんなら、あの子の想いを受け止めてくれると思います。
あなた、それでよかったんですよね。
憔悴しきった顔にかかるその白髪交じりの髪は、部屋の窓の隙間から吹き付けてくる風にかすかに揺れている。
月明かりにうっすらと照らされた、安らかなその母の寝顔の横には、一通の手紙が置かれていた。
------------------------
あなた、ごめんなさい。
私はあの子を幸せにすることが出来ませんでした。
いろんな悲しい思いや辛い思いをさせたというのに、いろんなことを我慢させてきたのに、何の幸せも掴むことなくあの子は逝ってしまいました。
あの子を守ることが出来なかった私は、本当に親として失格ですね。
でも、これだけは言えます。
あの子はその短い生涯を、立派に生きたということを。
そんな子に育てることができたことが、私の唯一の誇りです。
一昨日、あの子の部屋の中で見つけた日記を、ケンジさんの家に届けに行ってきました。
きっと、ケンジさんなら、あの子の想いを受け止めてくれると思います。
あなた、それでよかったんですよね。