坂道
第十三章 こうふく
車中にて
夜は十時を回っていた。
奈央は、ケンジからの信じがたい電話を受けて家を飛び出した。
どこをどう走ったか分からない。
学校へと続く坂のふもとにある公園の入り口を入ると、奈央は悲鳴にも似た声を上げた。
「裕美ぃ!!」
裕美よりも更に小さな体の奈央は、裕美の体に飛び込むと嗚咽にむせこんだ。
「裕美ぃ…ごめんね。私が止めなかったばかりに、こんなことになって…。ケンジ君にも辛い思いをさせて…。」
裕美は途切れ途切れにわびる奈央の頭を、まるで妹をいたわるようになでた。
「そんなに自分を責めないで、奈央。あなたのせいじゃないのよ。」
裕美はそう言うと、走ってきたため乱れた奈央のピンクのワンピースの襟を直した。
「ほら。あんまり泣くと、かわいい顔が台無しじゃない…。」
奈央は裕美にそう言われて、何度も何度も頷き、涙をこらえるように右手で両目を何度も拭った。
しかし、拭っても拭っても、涙は溢れてくる。
そんな奈央の頭を、裕美がその小さな指で優しく撫でた。
その時、ジーンズに白いブラウスを着た香澄が、夜の帳が完全に落ちた公園の入り口に現れた。
香澄を歓迎するかのように、左右の木が風に揺られてざわざわ、と音を立てる。
奈央は、ケンジからの信じがたい電話を受けて家を飛び出した。
どこをどう走ったか分からない。
学校へと続く坂のふもとにある公園の入り口を入ると、奈央は悲鳴にも似た声を上げた。
「裕美ぃ!!」
裕美よりも更に小さな体の奈央は、裕美の体に飛び込むと嗚咽にむせこんだ。
「裕美ぃ…ごめんね。私が止めなかったばかりに、こんなことになって…。ケンジ君にも辛い思いをさせて…。」
裕美は途切れ途切れにわびる奈央の頭を、まるで妹をいたわるようになでた。
「そんなに自分を責めないで、奈央。あなたのせいじゃないのよ。」
裕美はそう言うと、走ってきたため乱れた奈央のピンクのワンピースの襟を直した。
「ほら。あんまり泣くと、かわいい顔が台無しじゃない…。」
奈央は裕美にそう言われて、何度も何度も頷き、涙をこらえるように右手で両目を何度も拭った。
しかし、拭っても拭っても、涙は溢れてくる。
そんな奈央の頭を、裕美がその小さな指で優しく撫でた。
その時、ジーンズに白いブラウスを着た香澄が、夜の帳が完全に落ちた公園の入り口に現れた。
香澄を歓迎するかのように、左右の木が風に揺られてざわざわ、と音を立てる。