坂道
バンガローの中は、意外に広かった。



「こんなの、初めて。」


裕美は、木を組み合わせて作られた天井を見上げながら、表情を緩めて感嘆の声を上げた。


そのうれしそうな表情を見て、ケンジの頬も思わず緩んだ。



こうして六人で揃うのはいつ以来であろう。


ここにいる全員が、過ぎ去った高校時代に戻ったかのような、そんな無邪気な笑顔であった。



「そうだね。すごい、いい部屋。気持ちいい。」


裕美に呼応するように、香澄はそう言うと、部屋の真ん中に大の字になって寝そべった。



それを見た尾上が、注意した。


「おい、だらしなすぎるぞ。一応、女だろ。」


「一応、て何よ。最近仕事に追い回されてたからさ、大目に見てよ。男でしょ。」


そう言う香澄の言葉に、裕美と奈央の顔に笑顔がこぼれた。



奈央は、香澄が最近勤める美容院で、お得意さんも何人かついて、かなり忙しいと聞いたことがあった。


かなり疲れているのであろう。



尾上も、それ以上は何も言わなかった。


もともと注意したのも、それほど深い意味はなかったのであろう。




正反対のようで実はよくお似合いの二人だな、裕美はそう思った。
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