坂道
「あのさ・・・。」

「なに?」



にっこりと答える裕美に、ケンジはたどたどしく口を開閉させた。



「東京の大学に行きたいんだ。」


ケンジはそう言うと、裕美の表情を窺った。


しかし、その表情はどこまでも穏やかである。



「バカだと思うけど、プロ野球に行きたいんだ。だから強いチームに入りたいんだ。」


ケンジはそう言うと、恥ずかしそうに頭をかいた。



そんなケンジを裕美はまぶしそうに見つめた。


「全然恥ずかしくない。すごいことだと思う。」


裕美は、真剣な顔でそう言った。
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