坂道
そして、裕美はあの頃と変わらない満面の笑みを浮かべて、ケンジの胸から離れた。



「さようなら。世界一大好きな、ケンジくん。」


ケンジは言葉を返そうとしたが、声が出なかった。



ただ、弱弱しくその腕を裕美に向かって伸ばすことしか出来なかった。



しかし、そんなケンジに向かって、裕美は穏やかに首を振った。



「ケンジくん。もう、お別れしなきゃいけないんだよ。」
< 200 / 209 >

この作品をシェア

pagetop