坂道
ケンジは、裕美の優しい言葉が怖かった。

もう一度チラリと足元の貝の袋を見ると、不安になった。


貧しい裕美の家では、東京の大学に行けるはずはない。


裕美は、離ればなれになるのが平気なのであろうか。



「私も、東京に行こうかな。」

「え?」

裕美にはそんなケンジの内面などお見通しのようであった。
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