坂道
「離れたくない。なんなら大学にだって行かなくていい。」


「駄目。」


裕美は子供のように駄々をこねるケンジのほうに振り向くと、そう言って静かに首を振った。



「私のせいで、ケンジくんの未来を台無しにするなんて、耐えられないよ。」



裕美はそう言って、口をぐっと引き結び、まっすぐにケンジを見た。
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