坂道
「な、何を言ってるんだ。俺のことが嫌いになったのか…。」


「ううん。大好き。」



裕美は涙の雫で光る目のまま、にっこりと笑った。



「この街よりも、地球よりも、いや頭上に広がる澄み渡ったこの宇宙よりも、ケンジくんのことが大好き。」



「じゃあどうして…。」



ケンジの言葉を無視するかのように、裕美はガードレールに歩み寄ると、両手をおいて眼下に美しく輝く夜景を見渡した。
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