坂道
土門はケンジの右手を取ると、卒業生でにぎわう体育館の隅まで連れて行った。


「裕美と、何かあったのか。」



その土門の言葉に、ケンジの両目から今まで堪えていた涙が溢れた。


「すまん、土門。後で話す。話すから…。」


ケンジはそう言うと、それから先は言葉にならなかった。



あまりの突然のことに、土門はひどくうろたえた。



「おーい、始まるぞ!早く来いよ。」


「そうよ、早く早く!」



遠くから、尾上と香澄の声が飛んでくる。
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