坂道
土門はとっさに答えた。


「ケンジが腹痛いんだってよ。証書授与までには戻るから、ちょっと行ってくる。」



土門は早く来るよう急かして手を振る三人にそう叫ぶと、ケンジを引っ張って体育館から一番遠いトイレへと向かった。




しばらくして土門とケンジが卒業生の列に戻ってくると、すでに式典は始まっていた。



「ねえ、どうしたの。」


どことなく様子のおかしい土門に、隣の列に並んでいた香澄が声をかけた。



「い、いや、何でもないよ。」


ぶっきらぼうに土門がそう答えるのを見て、香澄は直感で何かを理解した。
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