坂道
香澄はケンジと距離をとると、ためらう土門をしばらく問いただした。


そしてケンジと裕美の間に起こったことを聞くと、沈んだ顔で壇上を見つめるケンジの後姿を横目でちらりと見た。



香澄は口元をきっと引き締めると、校長の訓示が続く卒業式を抜け出していった。




やがて式典は何事もなく終わり、証書の筒を持った卒業生たちは、後輩たちの両手で作ったアーチの中を潜り抜けていく。



その顔は、どれも笑顔が溢れていた。
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