坂道
ケンジは、あの坂道にいた。


東京の大学に行ってからというもの、二年間ふるさとのこの北国には一度も帰ってきたことはなかった。

じりじりと照りつける真夏の太陽の下、額から頬を伝って落ちる玉のような汗を、ケンジは何度も拭った。


思えばこの坂を、何度も下った。


道の端のガードレールの向こうには、街を見渡すことが出来る。

この風景の中には、いつも君がいたんだ。
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