坂道
そんなケンジの心中の動きなど、裕美には全て分かっていた。


だからここで、はっきりとお別れを自分が言わなければいけないと思った。


大好きなケンジを苦しめたくはなかった。



「さようなら。ケンジくん。」



裕美は、精一杯の強がりを言った。



しかしケンジはそれに応えて、サヨナラ、とは言えなかった。


どうしても言えなかった。


これで最後になるというのは分かっているのに、最後だというのを認めたくなかった。
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