坂道
そこには、溢れんばかりの裕美の思いが書き綴られていた。



あの卒業式の別れからも、裕美の心はいつもケンジにあった。


辛いときも、うれしいときも、常に自分のことを思い出してくれていた。



ケンジの両目からは、大粒の涙が溢れ出た。



ケンジがぱらぱらとページをめくると、日記の日付は今年の8月2日で終わっていた。



命日の三日前に書かれたその日記を、ケンジは読もうとして、ふと気がついて裕美の母親を見た。


「すいません。つい見入ってしまいまして…。」


「いいんです。ケンジさんにそれを読んでいただきたくて、それをお持ちしたんですから。」


やつれた表情の裕美の母親は、小さく首を振りながら、申し訳なさそうにそう言った。
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