坂道
ケンジは乱暴に部室の荷物を自転車のかごに詰め込むと、サドルに腰を下ろした。



すると目の前には、スカイブルーのセーラー服を着た裕美が、学生かばんを両手に持って立っていた。


そんな二人の横を、土門を先頭に自転車にまたがったチームメイトたちが、冷やかしながら通り過ぎていく。



「かっこよかったね。」

自転車にまたがったのケンジの前で、裕美はニコニコ笑いながらそう言った。


「そんなことないだろ。」

ケンジは不機嫌そうにそう言うと、ぐっと唇を噛んだ。


「ううん。すごいかっこよかった。」

そう言って裕美は、満面の笑みを浮かべた。


そんな裕美を見て、ケンジは乾いた足元のアスファルトをぐっと見つめた。
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