最低男に恋をして。
「唯くん…私、トイレ」
「え、あっ、
待って!!茉莉子っ」
人ごみの中に
駆け出していった。
なんか、バカみたい。
私は勝手に期待して。
高嶺悟が私のこと好きなんじゃないか、って勝手に期待して。
そんなこと、
全然なかったのに。
ずっと、本命の人が居たことに気づけずに。
勝手に盛り上がって。
「ヤバいっ雨?」
ちらほらそんな声がして、
みんな走り出して行った。
その中私は、
大通りに立ち止まったまま。
「うぅ……」
自分の涙なのか、
雨なのかはわからない。
大粒の雫が
全身を包み込んでいた。