最低男に恋をして。



「っさ、行こう!!」

私の腕を持って歩き出した唯くん。

「あの…、唯くん?」

しっかりと掴まれた手を離そうとしながら話しかける。


いつも優しい唯くんの後ろ姿。

全く違うのに
なぜか高嶺悟を思い出した。

胸を鷲掴みされたみたいに
苦しくて、痛くて。

バカみたいに
すぐ涙目になる。

諦めるのに。
もう、諦めたいのに…。


そのとき、急に唯くんが立ち止まった。

「唯くん?どしたの…?」

「俺、臆病になるの止めた」

「っはい?」

「宣戦布告。
なんにもしないまま諦めるなんて、無理。

やっぱり、茉莉子が好きだ。」


まっすぐ目を見る唯くんに、
やっぱり胸が痛くなった。




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