最低男に恋をして。



「だけどお前からしたら、
俺はただの"先輩"か?」

高嶺悟は、思わせぶりだ。

こんなこと言われたら
期待しちゃうよ…。


「先輩は…」
「やめろ、その呼び方」

キリッと私を睨みつけて
握られた手の力が強まった。


「悟でも、
高嶺悟でもいいから。
だから、そんな風に…呼ぶな」

「あの…」

「その歯切れの悪い話し方も。
なんなんだよ。

…電話も、メールも」

「あの…痛い」

握られた手首にそっと触れた。

電流が走ったみたいに体がうずく。


「あ、悪ぃ」

手首の温もりが容易に離れた。

こんな、危ういんだ。
こんな簡単に離れちゃうんだ。


「あのね、…」

言わなきゃ。

完全に失う前に、
ちゃんと言わなきゃ。




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