僕のスケープゴート
その夜…。雨が降った。
娘…。ナミは祠の奥でうずくまっている。






「ナミ…。どうした?」
ナミは震えている。やはり私が恐いのだ。






「私が恐ろしいか?」






「…違います。私は…。私は水がダメなんです。」





「水?…雨か。」






雨が恐いとは何なんだ?
いぶかしむ私にナミはゆっくり話し出した。






「私は幼い頃の記憶がなくて…。泳げもせず、雨が…恐いのです。」





ナミは目を瞑り、縮こまる。
雷が鳴る…。






「イヤァー!」
ナミは混乱し、私の側で震え、歯がガチガチとなっていた。
「ナミ…。ナミ!大丈夫…。祠の奥までは来ないよ。」






ピカ!と稲妻が走る…。
祠に叫び声がこだまする。





ナミを抱き寄せた。私の懐で耳を塞ぎ震えている。
この娘にも辛いことがあったのだろうか…。
私はけして開かない目を彼女に向けた。






雨が止むとナミはいつの間にか寝ている。
私も眠りに落ちる。






ポチャン…。ポコポコ…。





水の中にいる夢を見ていた。何もない…。水の冷たさが気持ちいい。何処だここは?知らぬ場所…。




水の中から突然暗がりになっていた。
あるのは孤独だ。苦しみが襲ってくる。

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