帰ってくる場所
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「ほたる~!悪いんだけど、田舎の絢音(アヤネ)ちゃんのとこに行ってもらえないかしら?」
お母さんが台所からリビングでテレビを観ていたあたしに声をかけた。
木陰(コカゲ)ほたる。
それが私の名前。
「絢音ちゃんのとこって、おばぁちゃんの妹さんの娘さんの」
「そうそう、その娘さんのとこ。なんかね、赤ちゃん産まれたらしいのよ~」
「えっ!?絢音ちゃんて18歳じゃなかった!?」
あたしが座っていたソファの背に手をかけて台所を覗くと鍋でグツグツ煮えるカレーを掻き混ぜながら「そうなのよ~」とお母さんは豪快に笑った。