帰ってくる場所
「入って入って!ただいま~」
絢音ちゃんに引っ張られるままに玄関に入る。すると、奥から「あんらぁ!」と派手なピンクのワンピースを着たおばさんが出てきた。
「お久しぶりです、美恵子おばさん」
「ほたるちゃん!久しぶりやけぇ、まぁ、別品さんになって!」
美恵子おばさんは絢音ちゃんのお母さん。つまり、おばぁちゃんの妹さんの娘さん。
「こんなド田舎までよく来てくれたねぇ~。ゆっくりしていきなぁね」
「ありがとうございます」
おばさんに頭を下げると絢音ちゃんが荷物を持って「ほたるの部屋、用意してあるけぇ。こっち来て?」と部屋まで案内してくれた。そこはおばぁちゃんの部屋だった場所。
「片付けといたから大丈夫だと思うけど、不便があったら言ってけぇ」
「ううん、ありがとう」
絢音ちゃんは満足そうに微笑んで「あ!波奈つれてくるな!」と部屋を出ていった。
8畳の和室を見渡す。
畳の匂いとお線香の匂い、庭にある小さな池で泳ぐ金魚の水を弾く音。
大好きだったおばぁちゃんの部屋。