happiness bitter
1・手紙
「あ?」
上靴を取ろうとしたらかさっと軽い手触りがした。手に取ると無機質な白い封筒だった。
「なぁに~またラブレター?」
隣にいた遊果(ゆか)は興味ありげにあたしの手中を覗こうとする。それを無視してカーディガンのポケットに突っ込んだ。
「さーね」
「また読まないで捨てる気でしょ。だめだよ読んであげないと」
「だって興味ないし」
そう言うと眉根を寄せながら遊果はあたしにしかめ面を向ける。
「もー悠菜(はるな)はいつもそう冷たいけど!この人は本気で恋してるかもしれないじゃん!」
「本気だったら直接渡してくるじゃん」
「あんた受け取らないで行っちゃうじゃん!」
「そっ…」
その通りで言葉が出ない。まだ睨んでいる遊果にため息をついて、ポケットで折れ曲がった手紙をしぶしぶ取り出した。
「見るだけだからね」
「誰から誰から??」
「………」
こいつ本当は見たいだけじゃないだろうか。
“昼休みB棟屋上で待ってます”
常盤
「………」
「あれ?常盤って」
これが
切なく苦く
ほろ甘い恋の始まり。