happiness bitter
黒板への筆圧と数字を並べ立てる声が教室に響き渡る。中間考査が近いこともあり、いつもより厳かな雰囲気が漂っている。
シャーペンを持つ右手に顔を乗せ、膝の上の左手はひたすらカチカチとボタンを打つ。急用でも無いがこの授業にさほど興味があるわけではないので、皆のように今だけ頑張るという気にもならなかった。
午後の陽射しがガラス越しに照らされる暑さときたら半端じゃない。窓を開けたいがこの空気がそれを許すだろうか。
なんて考えていたら前のドアが開き、先生の視線がそちらを見た。
「遅れました」
悠菜が怪訝な顔をして教室に戻ってきた。あたしははっと目を覚ます。
「…悠菜、常盤ってやっぱりあいつだったの?」
気だるそうに隣に座る悠菜はその言葉にばつの悪い顔をして渋々うなずいたのだった。