Last Valentine
いつも通りナギサを自転車の荷台に乗せてウチへ。

車庫でバイクから灰色のビニールシートをはぎとると少しほこりで煙かった。
ホンダ製の400ccの黒のバイク。
エンジンはまだかかるだろうか。

かかった。
ガソリンは満タン。
いける。

『レッツゴー♪』

ナギサははしゃいでる。
女を後ろに乗せるのは初めてだが違和感はなかった。

久しぶりのバイクは風が気持ち良い。
少しだけバイクに乗りたいと言い出した後ろのお姫様に感謝した。
少しだけね。

よく平日朝の天気予報の天カメで映る橋までくるとナギサのテンションは最高頂に達した。
ジェットコースターに乗ってるみたいにキャーキャー言ってる。
少しだけうっとおしい。
少しだけね。

橋を越えた辺りでナギサは急に静かになった。

『このまま死んじゃいたいな…』

風でよく聞き取れなかったけどナギサは確かに小さい声でそう言った。

俺の腰に回した手にギュッと力を入れる。
背中にナギサの頭がくっつくのを感じる。

ナギサが泣いてる。
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