イチゴのかき氷






二時間後、あたしはようやく恐怖から解放された。






「うっ、うっ…ひっく」






「いつまで泣いてるん?」







「だって、だって…」






「でも、涼しなったやろ?」






「ならないぃ…。蒼空のバカぁ」






「せやから、泣き止めって。俺が悪かったわ。」






「いやぁ、もう蒼空なんかしらない。あっち行ってよバカバカバカぁ」







「ふぅ、しゃーないな。」







そんな言葉が蒼空から出て、あたしから遠ざかる足音がして慌てて顔をあげた。






「…っ!蒼空っ!?」






涙で潤む視界には、小さくなってゆく蒼空の背中。






「や…、待って蒼空…」







追いかけようとしたけれど、人の波にその姿はのまれてしまった。






しかも、あたしも人が多くて動けない。






…そんな。






「…蒼空、行っちゃった」








まさか、本当に行っちゃうなんて。







思っても見なかった事態に、あたしはしばらく呆然とした。







< 19 / 31 >

この作品をシェア

pagetop