イチゴのかき氷
「千夏、よう覚えていてほしい。俺は必ず、また来年戻ってくる。受験して、絶対に合格してまた千夏に会いに来る。それまで、待っていてくれへんか?」
「…っ、待つ…っ!待つよ!一年でも、二年でも、何年でも!待ってるから…っ」
「千夏…。」
蒼空の、力強くて優しい腕に包まれて、あたしは別れを惜しむように何度も何度も涙を流した。
そして誓いを交わすように、そっと寄せあった唇。
別れのキスは、わずかにイチゴのシロップの味がした…――。
たった1日の出会い。
それなのに、いつの間にかすごく大切でかけがえのない存在になっていた蒼空。
恋に時間は関係ない。あるのは、気持ちと想いの強さだけ。
その意味を、あたしは初めて理解した。
暑い暑い夏の日。
出会ったのは、軽そうな関西人の男の子。
あたしより年上かと思ったら、子供みたい無邪気に笑う、年下で。
かと思ったら、ふいに男のひとの顔を見せたりする。
たった1日の、奇跡みたいな出会いは、まるで夏の日がうむ蜃気楼(しんきろう)のように夜と同時に終わりを告げた…―――。
その日を境に、蒼空とは会ってない。
それでも時は流れて。
夏が終わって、秋が来て、冬が来て、年が明けた。